深 層 を 読 む(2018年)

2018/3/24 「最後の頼みの綱となったマティス国防長官」

    ータカ派のポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官の就任で先制攻撃になるかー

(川上高司 拓殖大学海外事情研究所所長) 

 今、ワシントンで政府関係者やシンクタンクへの取材を重ねているが、その最中にテラーソン国務長官が解任された。そのニュースは衝撃的でアメリカの外交政策が強硬路線に向かう可能性が高まる中、追い打ちをかけるように今度はマックマスター大統領安全保障担当補佐官が解任された。マックマスター補佐官は、マテイス国防長官、テラーソン国務長官らとともにアメリカの外交政策の軌道を穏健路線に保っていた。イランとの協調路線を取るテラーソン国務長官が解任されて後任にはポンペオ、次はマックマスター補佐官が解任された後任には強硬派のジョン・ボルトンが指名された。
 
 ジョン・ボルトンはブッシュ政権時代に国連大使を務め、イラクへ侵攻しフセインの打倒とイランの核開発疑惑に対してイランへの攻撃をかたくなに主張した、筋金入りのタカ派である。その主張は今も変わらず、イランとの歴史的な合意を認めず軍事的手段でしかイランの核開発は止められないと考えている。ネオコンのボルトンにとってイランは攻撃対象でしかない。さらに、ブッシュ政権時代にボルトンはイラクとならび北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだ。ボルトンの就任で北朝鮮への先制攻撃の可能性も高まった。
 
 国務長官候補のポンペオもタカ派であり、トランプ政権の国家安全保障会議は勢力図が大きく変わることになる。今後はテラーソンやマックマスターとタッグを組んでいたマティス国防長官がタカ派に包囲されて孤立することになるのである。
 
 ワシントン政治の常識やバランスのとれた政策を目指すマティスが押さえ込まれ、ようやく秩序を取り戻した外交政策が再び混迷する可能性はますます高まる。国防長官の下には巨大な米軍が控えているとはいえマティス国防長官の身も安泰ではない。トランプ大統領が軍の最高司令官なのである。号令ひとつで戦争を始めることもできるのである。ブッシュ政権時代イラン攻撃の危険性が高まったとき、軍の高官たちがこぞって「イラン攻撃の命令を受けたら辞任する」と自らのクビをかけて阻止に動き、国防長官の説得もあって攻撃を回避することに成功した。しかし聞く耳をもたないトランプ大統領にその手法はおそらく通じないであろう。誰が辞任しようが攻撃すると決めたら突っ走るのみである。
 アメリカだけでなく世界にとっても今や頼みの綱はマテイス国防長官だけなのである。

2018/3/13 「さまよえるアメリカ外交政策」

(川上高司 拓殖大学海外事情研究所所長)  

 トランプ大統領は13日午前9時、テラーソン国務長官を解任すると発表した。テラーソン国務長官は同日午前4時、アフリカ訪問の行程を短縮してワシントンに戻ってきたばかりだった。おそらくテラーソンはそのタイミングで解任されるとは思っていなかっただろう。解任の理由もつげられていないに違いない。後任にはマイク・ポンペオCIA長官が指名された。ポンペオはトランプと近い親イスラエル。イランに対しては厳しい。当面、北朝鮮には宥和的に接し、イランには厳しくすることになるだろう。
 
 昨年末には年明けにテラーソン長官が辞任するとの噂がメディア上に飛び交い、後任にはポンペオが就任すると報じられた。その時はトランプ大統領は「フェイクニュースだ」とメディアを非難し、テラーソン長官も2018年いっぱいは長官に留まるとコメントした。しかし、トランプ大統領にとってはすでに腹は決まっていたのだろう。
 
 テラーソン長官とトランプ大統領の不仲は今に始まったことではない。テラーソン国務長官はパリ協定からの離脱にやランの核合意の破棄に反対していた。エルサレム移転問題でも意見を異にしていたが沈黙を守った。トランプ大統領の外交政策は混乱している中東情勢をますます不安定にするだけで、安定にはほど遠い。
 
 シリア内戦は3月15日に7年目を迎え一向に終わりが見えない。もはやアメリカ史上最も長い戦争となったイラク戦争に迫る勢いである。この間アサド大統領は権力の座に留まる一方、アメリカの国務長官は、クリントン、ケリー、テラーソンと続き、ポンペオが4人目となる。彼らが心血を注いできても解決しないほど中東情勢は複雑で難しいのである。
 
 現実主義で理性派のテラーソンが去ることでアメリカの外交政策がどこへ向かっていくのかもはや誰にも予測できなくなっている。マティス国防長官、ケリー補佐官やマックマスター補佐官は残っているが、彼らといえどもいつ政権を去るかわからない。
 
 実のところ、テラーソン解任の前にはトランプ大統領の国家経済会議の委員長であったグレイ・コーンが辞任を表明している。トランプ大統領の保護貿易主義に真っ向から反対してアメリカの自由貿易を守ろうとしてきたコーンだったが、トランプ大統領の鉄鋼とアルミニウムの輸入制限をかけるという決定に嫌気がさしたようである。
 
 このようにトランプ政権では理性派で現実主義的な閣僚が次々と政権を去って行く。後任はトランプ大統領に忠実でイエスマンばかりとなる。アメリカがどこへ向かっているのか、おそらくトランプ大統領自身にもわかっていないに違いない。世界にとってアメリカが「最大の脅威」となりつつある。

2018/2/26 「トランプの中東外交ー過去に学ぶアメリカの中東外交ー」

(川上高司 拓殖大学海外事情研究所所長)  

◆過去からの経緯と分析の視点
 アメリカの外交政策の基本は、建国以来伝統的には孤立主義であった。主にヨーロッパの国際関係には巻き込まれないように同盟を拒否しひたすら国力を蓄えることに専念してきた。その伝統的孤立主義を大きく転換したのがウッドウロー・ウイルソン大統領であった。ウイルソン大統領は理想を掲げ、国際社会との関わりの中でアメリカがアメリカの理想と民主主義を広めるというウイルソン主義に邁進した。それでも第1次世界大戦後の世界では自ら提唱した国際連盟への加盟を拒否し、孤立主義を貫いたのである。
 第2次世界大戦にアメリカは当初は戦争に関与しない方針であったが一転して、参戦し孤立主義から転換して世界へと関与を続け米国の覇権を築いた。したがってアメリカは中東に本格的に関与を開始したのが第2次世界大戦前後である。それまでは中東はヨーロッパ、特にイギリスの外交政策の独壇場であった。イギリスにとり中東は、中国と自国との間にあり地政学上の要衝であった。その中東でのプレゼンスを確保するためさまざまな外交政策を展開したが、第2次世界大戦でイギリスやヨーロッパが疲弊し手を引いたため力の真空が生まれた。その真空地帯にアメリカが入り込んだという構図が描ける。
 アメリカの中東政策を左右してきたのはイスラエルとの関係と石油であった。イスラエルの中東における存在が不安定で紛争を抱えていたため、イスラエルには後ろ盾が必要であり、その役割をアメリカが担った。その後、アメリカの中東政策はイスラエルとの関係に大きく影響を受けるようになった。
 石油の観点から鑑みれば、アメリカは世界の産油国を束ね石油マーケットに絶大な影響力を持つサウジアラビアとの関係を安定させ石油の安定供給を図ることが中東政策の基本であった。
 この両者(イスラエル問題と石油問題)は表裏一体と考えることができよう。サウジアラビアは同じイスラム教でもスンニ派であり、シーア派イランとは対立する。またイランの核開発に不安を抱くイスラエルにとってもイランは(潜在)敵国である。このようにイスラエル問題と石油問題の裏面としてのイランとアメリカの関係は複雑多岐にわたる。すなわちアメリカの中東政策はイラン政策であるといっても過言ではないと言えよう。
 このようにアメリカの中東政策を裏面であるアメリカのイラン政策から分析することが重要となる。
 
◆アメリカのイラン政策
 アメリカがイランと関わるようになったのは、第2次世界大戦の最中であった。ドイツと戦うロシアへの補給はイギリスがイラン経由で担っていた。しかし戦争が激化するにつれイギリスがロシアでの補給が困難となったためアメリカがその役割を担うようになった。つまりロシアへの物資の補給をイランを通ってアメリカが行なうようになり、それが契機となりアメリカとイランとの関係が確立されたのである。
 このような歴史的流れからイランはそもそも親米国であった。その流れが変わったのは1979年のイラン革命であり、この革命のため親米政権は倒れ国交断絶、オバマ政権までイランは敵国となった。
 アメリカのイラン政策が姿勢が厳しくなるのは2001年に誕生したブッシュ政権からであり、イランを「ならず者国家(ローグ・ステイト)」としてイランの核開発を非難し経済制裁を課した。 
 イスラエルはレバノン南部を拠点とするシーア派過激派組織「ヒズボラ」はイスラエルと闘争関係にあり、その支援国がイランである。したがってレバノンからミサイルが飛んでくる脅威はイスラエルにとっては最大限の脅威であり、さらにイランの核開発はイスラエルの生存を脅かすものとなっていた。そのためにイスラエルはアメリカに対しイランへの強硬姿勢を求めた。その一方、サウジアラビアも宿敵イランを潰すためにアメリカに対イラン政策への強固策を求めた。
一方、イランの観点からはアメリカの自国に対する敵視政策が不明瞭であり、20033年には外交ルートを使い外交復活と宥和策を働きかけたこともあった。しかもイラク戦争開始時には米国との協力関係を模索したがそれでもアメリカのイラン政策は強硬であった。
 その転換点となったのが2009年のオバマ政権の誕生であり、特にオバマ政権の2期目でケリーが国務長官に就任すると核開発問題を扱う6カ国協議はロシアのラブロフ外相と共同し進められ、歴史的な合意に達した。イランのロハニ大統領が穏健路線であったことも相まって、アメリカの対イラン外交政策は宥和へと大きく転換したのである。
 この米国とイランとの外交政策の進展には二つの理由がある。第一はオバマ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相との関係最悪によるイスラエルのアメリカに対する影響力の低下であり、第二はアメリカでのシェールオイル産業が興隆である。このためためアメリカは石油をサウジアラビアなどの中東諸国へ依存する必要がなくなった。サウジアラビアはアメリカのシェールオイル産業を潰すべく原油価格を下落させ消耗戦を展開したが、シェールオイル産業は持ちこたえかえって企業体質を改善し世界の原油マーケットで猛威を振るうまでとなった。アメリカはイランとの外交政策を転換しそのためますますイスラエルとサウジアラビアとの溝が深まっていった。
 しかし、この宥和路線は劇的に変化する。2017年トランプ大統領が就任すると基本的にオバマ政権の路線を否定する外交が展開され、トランプ大統領はイランとの核合意を反故にすると宣言した。しかしこれにはヨーロッパ諸国が猛反発した。アメリカの対イラン宥和路線によってイランへの経済的進出になだれ込んでいたドイツやイギリスなどのヨーロッパ諸国にとって、イランとアメリカが再び外交を閉ざしてしまったらイランとの経済協力がすべて水の泡になってしまう。これはヨーロッパにとっては見過ごせない惨事であった。その間隙をぬってロシアや中国がイランとの経済協力を独占してしまう懸念もあった。
 
◆イスラエルとの関係改善
 イランとの関係が悪化するとイスラエルとの関係はトランプ大統領の就任から劇的に変化した。トランプ大統領は就任早々イスラエルのアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転すると宣言して物議を醸し出し、12月にはエルサレムをイスラエルの首都と認定すると発表して世界中から非難を浴びた。エルサレムはイスラム教、キリスト教、ユダヤ教の聖地を抱える。パレスチナ自治政府は東エルサレムを首都としたいと考えている。一方でイスラエルはエルサレム全体を首都としたいと考えており、対立している。オスロ合意では和平協議の中でエルサレムをどうするかは話し合うことになっているが、いまだ解決していない。そのため国際社会は自国の大使館はテルアビブに置いており、エルサレムを首都と認定した国もなかったのである。
 その繊細さゆえにエルサレム認定問題は決着がつかず先送りされてきた経緯がある。アメリカ議会は大使館をエルサレムに移転する法案を成立させたが、クリントン大統領以来、大統領令によって実質的には移転を延期してきた。イラン強硬派であったブッシュ政権ですら移転は認めなかったほどである。
 トランプ大統領は自らの支持者や支持層へのアピールのためにエルサレムを首都と認定し、イスラエルや支持層から絶賛された。しかし国際社会は猛反発、国連では認定撤回の決議がなされるなど、アメリカが世界から孤立し大国としての威厳も傷ついてしまった。
 トランプ大統領の言動は、十分に考え抜かれたものとはほど遠いと考えられる。トランプ大統領の関心事は常に自らの支持層に向けられており、そのためにはアメリカのこれまで追求してきた世界秩序の維持という国益を損なうことも厭わないという危険をはらんでいる。外交の舞台はきわめて複雑で繊細である。ローズベルト大統領の「棍棒外交」が世界秩序維持のためと行ってきたといえるが、トランプ大統領の「棍棒外交」はは自らの利益の追求が目的であり、その意味では世界秩序の破壊を伴う可能性が大である。

2018/2/16 「アメリカ人は地理に弱い。だから戦争をする」

(蟹瀬誠一 国際ジャーナリスト・明治大学教授)  

 私が初めてそう古豪のジャーナリストから聞かされたのは『TIME』誌ニューヨーク本社でインターンをしていた1970年代半ばだった。
 
 地理に疎いとなぜ戦争をするのかといぶかしがっていたら、「その答えはトム・ソーヤの冒険にある」というヒントが返ってきた。こうなるともう謎解きである。
 
 『トム・ソーヤの冒険』といえは19世のアメリカ人作家マーク・トウェインの名作だ。トウェインは小説だけでなく珠玉の名言も多く残している。そこで辿り着いたのが次の言葉だった。
 
 ”God created war so that Americans would learn geography.(神はアメリカ人に地理を勉強させるために戦争を作った)”
 
 いかにも皮肉とユーモア好きだったトウェインらしい。
 
 その言葉どおりだとすれば、アメリカ人はずいぶん地理を勉強してきたことになる。なぜなら1776年の建国以来、アメリカはその歴史の9割以上の歳月を戦争に費やしてきたからだ。5年間戦争をせずに過ごしたのは唯一大恐慌の孤立主義時代(1935年~1940年)だけである。
 
 これでさぞかしアメリカ人も地理に詳しくなっただろうと思いきや、そうでもなかった。ナショナル・ジオグラフィック(全米地理学協会)の調査結果によれば、地図を見て戦地のイラクやアフガニスタンはおろかニューヨーク州も指させないアメリカの若者(18歳~24歳)がなんと今でも5割もいるという。彼らが世界最強覇権国の将来を担うかと思うと背筋が寒くなる。要は、テレビやインターネットが普及し世界中のニュースがリアルタイムで届く今でも、アメリカの若者の多くは身近なこと以外にはあまり興味がないのだ。
 
 それだけではない。「アメリカファースト、自分ファースト」のトランプ大統領を誕生させた背景にはアメリカの大衆に広がる反知性主義がある。経済格差だけではなく、知識を拒絶する多数の大衆と知識人階級との断絶がアメリカ社会を二つに引き裂いているのだ。
 
 内向的なアメリカ国民にはもっと日本を含めた世界各国の情勢を知ってもらいたい。しかし、朝鮮半島や中東で戦争の足音が近づく中、核のボタンを持つトランプ大統領にはこれ以上地理の勉強だけはして欲しくない。(終)
 

2018/2/12 「ウォー・ゲーム」

(蟹瀬誠一 国際ジャーナリスト・明治大学教授)  

 「ウォー・ゲーム(War Games)」をご存じだろうか。最新のコンピューター対戦ゲームではない。政府、軍の研究機関、民間の研究所、マスコミの専門家が一同に介して、現実の危機を分析・予測をするシミュレーション(模擬演習)のことだ。 
 先日、私が理事を務めるNPO外交政策センター(FPC)主宰で「ウォー・ゲーム」が都内某所で行われた。参加者は約50人、テーマはもちろん緊張が高まる北朝鮮核危機である。 
年が明けても、トランプ米大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長の挑発的発言はとどまる気配をみせていない。核発射ボタンは「常に自分の机の上にある」と金正恩が挑発すれば、トランプもすぐさま「俺はもっと大きくて強力な核ボタンを持っていて、ちゃんと機能する!」とツィッターで反撃。まさに「爬虫類脳」のぶつかり合いだ。爬虫類脳とは人間の脳の一部で、この支配下では人間は我慢を忘れ、目先の満足を求めて超自己中心的になる。その典型である二人のリーダーが核戦争の恐怖を世界に拡散しているのだから始末が悪い。 
 今回のシミュレーションでは、参加者は米国政府チーム、中国政府チーム、韓国政府チーム、日本政府チームの4つに分かれ、本部から時々刻々伝達されるシナリオついて対応策を検討した。参加者は現実の大統領や首相、閣僚などの役割になりきって決断しなければならないから緊張感は半端ではない。なにしろ人類初の核戦争に発展しかねないのだから。 
 議論された内容についてはチャタムハウスルールが適用された。英国のシンクタンクである王立国際問題研究所(チャタムハウス)に由来する決め事で、参加者はシミュレーション中に得た情報を外部で自由に引用・公開することができるが、その発言者を特定する情報は伏せなければならないというものだ。 
シナリオは今年の春に米国の北朝鮮に対する軍事行使の可能性が一段と高まるという設定が始まった。北朝鮮の挑発的軍事行動を受けて各国はギリギリの選択を迫られる。米国は先制核攻撃を行うのか、核ミサイルを撃ち込まれた日本はどう対応するのか、中国は北朝鮮に軍事侵攻するのか、など生々しい「FIRE AND FURY」(炎と怒り)が展開された。もちろんその中には経済的なインパクトも含まれていた。 
 かつて、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)で行われた「アジア太平洋危機シミュレーション」に参加したことがあるが、その時のことを彷彿とさせる経験だった。シミュレーションに参加するたびに実感することは、敵対する双方とも本音では戦争を避けたいと思っているのに、些細な計算違いや恐怖から武力衝突の歯車が一度回り始めると誰にも止められなくなってしまうということだ。だから、爬虫類脳に支配されたトランプが“Bloody Nose”(鼻血)作戦と称して戦術核で北朝鮮に限定的な攻撃を検討しているなどという報道に接すると背筋が寒くなる。 
 もちろんシミュレーションではベースラインシナリオ(開始時点での状況の設定)や参加する顔ぶれによって結果は大きく変わる。結果はあくまで結果でしかない。シミュレーションで最も重要なポイントは、危機に直面した各国の指導部がどのような思考、決断をするかというプロセスの分析である。その過程で様々な問題点があぶり出され、それが教訓となって実際の危機対応や未然防止に役立つのだ。日本の政府やマスコミもいたずらに危機感を煽るだけでなく、官民一体で本格的な危機シミュレーションを行い、その内容を公表することが肝要だ。

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